暮らしのコラム
実は英設計では、
玄関に引き戸をおススメしておりません。
例えば、、Ykkさんの玄関引き戸として、
コンコードS30 というような製品もあります。

一つの大きな要因としては、
気密が確保できない点にあります。
どうしても、開き戸(ドア)に比べ、
引き戸、という形状において、
横スライドして開閉する必要があります。
そのため、
どうしても、部材同士のこすれを防止するために、小さなすき間を作っておく必要があるのです。
すると、きちんと密閉を望むことが製品の構造上難しい結果を生むのです。
玄関廻りで、外気温の冷えが空気が、不用意に気流が発生させると、
玄関廻りで結露を起こしてしまう可能性が高まってしまいます。
そういった点から、
英設計では、
玄関はドア(開き戸)にてご提案させていただいております。
実は、それ以外にも、
ポイントにしている部分がありますので、
今回は、「気密」以外に注意すべきポイントをお伝えさせていただきたいと思います。
実際の有効開口幅
引き戸の形状として、
ドアと比べると、どのくらい差があるか、調べてみましょう。
例えば、当社で採用している、
木製断熱玄関ドアの「ユーロトレンドG」

こちらは、HPのデータから計算すると、
90° にドアを開いた場合、
「有効開口幅」がおよそ 814mm
次に、
イノベストD70 / D50 (YKKap)

イノベストの玄関ドアは、基本の枠外寸法が W982 となり、
資料から、計算してみると、
実際の有効寸法としては、
イノベストD70 では、 「800.1mm」

イノベストD50 では 「806.9mm」

ともに、 玄関ドアタイプでは、
800mm 程度の有効開口幅が確保されます。
対して、
引き戸の製品を調べてみましょう。

YKK の 断熱スライディングドア(引き戸)で「コンコードS30」という製品を参考地にしてみると、
有効開口幅が、 「750.5mm」
実際、メーターモジュールの製品だと、有効開口幅が840mmの製品もありますが、
基本は、
関東間 (柱と柱の間が 1818mm~1820mm が基準)の柱間ピッチで設計をしていくので、
その場合は、実は、引き戸の方が有効開口幅が狭くなる、ということもあるのです。
断熱性能の比較
つぎに、断熱性能を見てみましょう。
断熱性能は「熱貫流率」で示されます。
熱貫流率は、内外の温度差が1℃(1K:ケルビン)の時に、
1時間当たりに、1㎡あたり、何 W(熱量)が移動するのか(熱が逃げてしまうのか)
を示す指標となります。
つまり、この数値(熱貫流率)は、数値が小さいほど(0:ゼロに近いほど)、
熱を逃がしにくい。という指標になります。

およそ、 断熱スライディングドア(引き戸)のコンコードS30で、
熱貫流率が、 1.90 W/㎡K を示しています。
※ガラス入りの引き戸の場合は、もう少し性能が悪くなり熱を逃がしやすくなります。
対して、
玄関ドア(開き戸)の場合、

ユーロトレンドGの場合、 熱貫流率が 0.96 W/㎡K
なんと、熱貫流率が、およそ半分です。
すなわち、1時間当たりに熱が逃げる量が、2倍違うということになるのです。

同じ、YKKap の製品で比較してみたときに、
イノベストD70 では 熱貫流率が 0.90W/㎡K
そして、
イノベストD50(樹脂複合枠) では 熱貫流率が 0.95W/㎡K
という結果に。
ユーロトレンドG と同じように、約2倍、熱を逃がしにくい扉になります。
イノベストD50は、できれば「樹脂複合枠」を選びたいところです。
樹脂複合枠にたいして、「型材断熱枠」というのは、
屋外側に、アルミを使用しているので、
どうしても、熱を逃がしやすい構造になってしまいます。
今後の製品の性能向上があれば、検討したい
今後、新しい製品で、
性能向上が見込めて、気密性能がしっかりと確保できる製品があれば、
採用の方針も検討ができるかもしれません。
今回は、あくまで、
YKKap さんの製品を参考に、
・有効開口幅
・玄関戸 としての、断熱性能
に着目して、比較したコラムとなりました。
例えば、木製の玄関引き戸で、
・有効開口幅も 広め
・断熱性能も良好
・気密性能に対して、気密ブロックの設計がされている
という製品が出てきましたら、
改めて検討していきたいと思います。
まだまだ、日本の玄関ドア・引き戸は性能向上が望めると思います。
まずは、気密が大切です。